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婦人問題解決の急務
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婦人問題解決の急務
大隈重信
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Chapter 6 of 6

六 軽浮なる婦人論者を戒めて真摯なる研究を望む

日本の浅薄なる空想家は独逸もしくはスカンジナビヤ辺の神経過敏なるものが、何か一種の婦人論を唱説すると、忽ちその波動を受けてこれを総合的に統一的に考え、純不純、正不正を究むる事をせずに請け売りして騒ぐ。婦人問題は前述せる如く、ただ一面観によって片付け得る如き左様な単純なもので無く、経済上、社会上、政治上、道徳上、関するところ甚だ大なるものであるから、慎思熟慮、根本的の解決を下さなければならぬことを思うべきである。しかしながら、たとい初めは請け売りにもせよ、これが動機となって、真面目にその根本的解決を下す時が到来するかも知れぬ。我輩はこれを歓迎する。いわゆる婦人問題なるものは一言以てこれを蔽えば、女子が男子に向って社会上、政治上に同等の権利を得んとする問題であるが、これが自然の境遇上、余儀無き四囲の状勢に迫られて起るとすれば宜しいけれども、然らずして皮相なるただ眼前の現象より来る、男子に対しての嫉妬心とか執着心に根ざし、遮二無二男子と同じからんと騒ぐものであっては致方ない。あるいは気の弱く徒に平和を望む男子は彼等の虚喝に威嚇されて雷同するかも知れぬけれども、かくの如き根底なき思想により、女子が許されて権力を得、放逸に活動するに於ては、社会は如何なる害毒をこれより蒙るかも知れぬ。即ち他を咎めてその顰みに倣うの流義で、今の我儘なる男子の行為を見て、男子すでにこれを為す、女子もまたこれを為して何をか憚らんという風に振る舞うに至る如き事があっては、この世は男子のみですでに陰翳を投げおるものが、更に女子に助けられて、一層暗黒ならしめらるる事となる。この点は深く考察を要すべき事で、この大戦後益々婦人の権力の世界に張り来るべきに当り、かかる新旧両思想の巷に立つ我が邦人は注意せなければならぬ。

徒に新に趨るも不可なれば、徒に旧に泥むるまた不可である。封建制度、階級制度の時に力を得た思想が、何時までも変ることなく力を有する如くんば、到来起るべきこの新しき婦人問題、もしくは更に社会問題に対して根本的解決は出来ぬ。即ち現存の風俗を、何処までも善良なるものと見做し、苟もこれに悖るものがあれば、ことごとくこれを誤れるものとして一排し去らんと勉むるが如くんば、何を以て新興の思想に同情ある理解を得ることが出来ようぞ。然るに事実上かかる頑冥にして、変通を解せざる一派の思想が力を有し、それがために当然来るべき進歩的発展的なる思想が、人為的に沮止され方途に迷うて彷徨しつつある観を呈している。

道徳の根、風俗の本は皆家に在り。家の単位は夫婦に在る。即ち男女に在る。特に日本は国初以来の家族制度を持続し来るに於てをや。西洋では家族制度が進歩して個人制度に移って来たが、日本は家族制度そのものを時代と共に進化せしめて今日に至り、ここに強固なる国礎を築成している。これがその能く西洋文明と同化して列強の伍伴に列し得るゆえんである。家の重んずべく而してその単位なる夫婦の重んずべきは我が国に於て一層である。本立って道生ず。然らばこの大本なる婦人問題を、粗漫に付して可なるべきでない。我輩は今直ちにこれに断察を下すだけの知識と聡明とを欠いているけれども、これが眇視し去るべからざる大問題であることだけは確実に認めている。今でこそ一部軽躁なる青年男女の間の唇頭に上りおるのみであるけれども、早晩吾人の実生活に親密なるものとして、現形し来たるこの大問題に逢着するは数の明らかなるところであるから、吾人日本国民は早くこれを研究し解決しおき、風雨殺到して後に俄に門戸の綢繆を謀るが如き愚に陥らざらんことを希望する。

●図書カード

Chapter 6 of 6
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