Chapter 1 of 1

Chapter 1

いちばん下の勇ちゃんには、よくおなかをいためるので、なるべく果物はたべさせないようにしてありましたから、ほかの兄さんや、姉さんたちが、果物をたべるときには、勇ちゃんの遊びに出て、いないときとか、また夜になって、勇ちゃんが寝てしまってから、こっそりとたべることにしていました。

「僕、びわがたべたいのだけど。」

「私は、水蜜がたべたいわ。」

兄さんや、姉さんたちは、果物の季節になると、いろいろおいしそうな、果物が、店頭に並ぶのを見てきて話をしました。

「晩に、勇ちゃんが休んでから、買ってきておたべなさい。」と、お母さんは、おっしゃったのであります。

ところが、ある日のこと、お土産に、みごとなパイをもらったのでした。

「まあ、おいしそうね。」と、お姉さんが、いいました。

「お母さん、すぐに、切っておくれよ。」と、太郎さんが、いいました。

「果物がはいっているから、勇ちゃんは、たべていけないのですね。」と、二郎さんが、パイをながめながらいいました。

さっきから、やはりだまって、おいしそうな大きなパイをながめていた、勇ちゃんは、これをきくと真っ赤な顔をして、二郎さんにとびつきました。

「そんなこと、あるもんか、僕、みんなたべるんだい。」と、けんかがはじまったのでした。

「ああ、これは、勇ちゃんもたべていいんですよ。」と、お母さんが、おっしゃったので、やっと勇ちゃんの怒りは解けましたが、

「僕、たくさんもらうんだ。」と、勇ちゃんが、がんばると、

「ずるいや、お母さん、公平に分配してくださいね。」と、二郎さんが、叫びました。

「お母さんは、いつも、公平に分配するじゃありませんか。」

このとき、二郎さんが、メートル尺を持ってきたので、みんなは、笑い出しました。

パイをたべた後で、お母さんは、たなからゼリビンズのはいった袋をおろして、四人の子供たちに、分けてくださいました。色とりどりな曲玉形のお菓子は、めいめいの前にあったさらの中でかがやいて見えました。

「僕のは、これんばかし。」と、太郎さんがいいました。

「姉ちゃんが、いちばんたくさんだ。」と、二郎さんがいいました。

「いいえ、みんなおんなじですよ。かんじょうをしてごらんなさい。」と、お母さんがいわれました。四人はかんじょうすると、いちばん小さい勇ちゃんのが、一つ多かっただけで、三人のゼリビンズの数はまったくおんなじだったのです。

「それごらんなさい。お母さんは、かんじょうしなくても公平でしょう。」

「お母さんは、えらいな。」と、子供たちは感心して目をみはりました。

●図書カード

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