Chapter 1 of 1

Chapter 1

泉水の中に、こいと金魚が、たのしそうに泳いでいました。しかし、黒いねこが、よくねらっていますので、ゆだんができませんでした。いつ、つかまえられて、食べられてしまうかしれないからです。

「私が、見張りをしてあげましょう。」と、毎日、泉水のほとりで遊んでいる鶏がいいました。鶏は、すばしこかったから、けっして、ねこにとらえられるようなことはありませんでした。

「どうぞ、おたのみいたします。」と、こいと、金魚はいいました。

鶏は、毎朝小舎の屋根に飛び上がって、いい声で、ときをつくりました。そして、黒いねこが泉水の近くを歩いていると、コケッコ、コケッコといって、泉水の中の金魚や、こいにも、注意をしたのであります。

すると、金魚も、こいも、水の中に深く、くぐってしまいました。

「なんと羽のあるものは、自由じゃないか。」と、鶏はいって、金魚や、こいに対して、威張りました。金魚や、こいは、なんといわれてもしかたがなかったのです。

「あなたは、ほんとうにえらい。」といっていました。

ある朝、金魚や、こいが目をさまして、上を見ますと、小舎より、もっと高く、空に大きなこいのぼりが、ひらひらとしていました。こいは、これを見ると、喜びました。

「あんなに、大きな仲間が、あすこへやってきた。もう、鶏のお世話にならなくても、あの仲間が、黒ねこのきたのを知らせてくれるだろう。」と、こういいました。

「鶏さん、長い間、ありがとうございました。しかし、私らの仲間が、あんなに高いところへきたから、もうだいじょうぶです。」と、こいが、鶏に向かっていいますと、鶏も、これからは威張られなくなったと、元気がありませんでした。

太郎さんは、その晩、こいのぼりを家へいれるのを忘れました。そして、夜中から、ひどい雨になったのであります。

夜が明けてから、金魚や、こいが上を見ますと、大きなこいのぼりは、雨にぬれて破れて見る影もありませんでした。

「おまえの仲間というのは、あれは、なんだい。」と、鶏はいって笑いました。そして、勝ちほこったように、小舎の屋根へ上がって、ときをつくりました。

●図書カード

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