Chapter 1 of 1
Chapter 1
秋の木の葉がふるひ出す、
ものにおびへた眼の色は、
たゞ白びかり――何を見る。
ひら/\と黄葉がちる、
彼れは何処へ? 真暗な、
谷へほこらへ――あな消へた。
暗い森から鳥が啼く、
あなほろ/\と、そこなりに………
ある触るる音よ、暮るる日の
天と人とのなかを過ぐ。
食ひのこしたるパンの切れ、
ぢつとみつめば、涙ぐむ。
白髪頭のお爺さん、
曲つた腰もかまはずに、
物識り顔に世を渡る。
前にあるのは何かいな、
後ろにゐるのは誰れかいな、
静かに眼ひらき見よ!
前にあるのは白き家、
後ろにあるは、黒き影、
なかのお爺さんそを知らぬ。
空が焼けた、真紅にやけた!
悪しき獣を屠つたやうに………。
空の自然□鏡なら、
人間道 悲惨な心、
写し出した地獄□か?
●図書カード