Chapter 3 of 37
靜かにさめしたましひの
靜かにさめしたましひの
一日は花とにほひ咲く、
ゆふべにねむる花なれば
贈らむすべはなけれども、
わが戀ふる人、君をこそ、
君が眼をこそ慕ひ咲け。
いかにひらきてたましひの
花となりけむ知らねども、
この曉の水を出で、
一日のすがたゆるされて、
一夜に消ゆるこの花の
さだめもすでにつたなしや。
高き臺のあらばあれ、
光みがける欄干に
垂れてかからむすべもなく、
底ひもわかぬ青淵の
浪に流るるひもすがら、
君にむかひて咲けるのみ。
靜かにひらく花なれど
花の頸は傾きぬ、
夕ばえ小島巖かげ
彩帆あげゆく鳥船の
すがたはあらで、さびしくも
ゆらぎてたてる花の性。
いにしへ一代、后土の
いまだ焔と燃えし時、
火の海原の母の貝、
殼の双葉に晶玉を
いつか産みしと人知らぬ
それにも似たるたましひの花。