Chapter 1 of 5

Chapter 1

人物

生田 是則  四十九

妻  数子  四十六

息子 是守  二十五

小間使てる  二十一

七月の半ば過ぎである。某省の高級官吏生田是則は、休暇を取つて、家族と共に海岸の別荘へ来てゐる。家族と云つても、妻の数子と、長男の是守。次男の是高は、海が嫌ひだと称し、その代り、夏になると山登りの病気がはじまる。別荘には、番人夫婦がゐるから、本宅からは小間使のてる一人を伴に連れて来た。このてるといふ女は、まだ最近傭ひ入れたばかりであるが、行儀もよし、気転も利くといふので、多少朋輩を抜いて、奥さんのお気に入りだ。難を云へば、必要以上に眼鼻だちが整ひ、上眼使ひに人を見る時などの油断ならぬ艶かしさだ。

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