Chapter 3 of 42
夏
郷里柳河に帰りてうたへる歌
一
廃れたる園に踏み入りたんぽぽの白きを踏めば春たけにける
二
夕暮はヘリオトロウプ、
そことなく南かぜふく
やはらかに髪かきわけてふりそそぐ香料のごと滲みるゆめかも
三
哀調一首
きりはたりはたりちやうちやう血の色の棺衣織るとか悲しき機よ
四
ロンドンの悲しき言葉耳にあり花赤ければ命短し
いと高き君がよき名ぞ忍ばるる赤きロンドン赤きロンドン
狂ほしく髪かきむしり昼ひねもすロンドンの紅をひとり凝視むる
縫針の娘たれかれおとなしくロンドンの花を踏みて帰るも
ロンドンは松葉牡丹の柳河語なり
五
枇杷の木に黄なる枇杷の実かがやくとわれ驚きて飛びくつがへる
枇杷の実をかろくおとせば吾弟らが麦藁帽にうけてけるかな
六
ケエヅグリのあたまに火の点いた、潜うんだら消えた
吾弟らは鳰のよき巣をかなしむと夕かたまけてさやぎいでつも
七
Gonshan, Gonshan, 何処へいた、
きのふ札所の巡礼に
馬鈴薯の花咲き穂麦あからみぬあひびきのごと岡をのぼれば
黒鶫野辺にさへづり唐辛子いまし花さく君はいづこに
燕コツキリコ、畦道やギリコ
病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑の黄なる月の出