Chapter 1 of 2

〔一〕

単の着物を羽織りたいま夏の時季が訪れたけれども私の白い単は恰も乞食の着物の様によごれている    *やるせない心は、私の生立ちの大切な、又、辛い負いめである私は荷われた運命の様に灯の下へも、川へも、丘へもともなわねばならないこれこそ私の友であるのだ    *私はこれまで、商人達、友達、ああ私よりはたしかに裕福な人達にどんなにかいやな思いをさせたろうけれども私は決して自分を偽りはしなかった私は偽られた自分に鞭打って忠実の僕であった筈だ    *若し、私に月日の差別がなかったら若し私にすべてが入用でなかったら若し私は勝手な王者であったなら私は必ず他人の前に、あの悲しかった事を注意しはしなかったそして父や母の前で元気や夕餐も出来たろうそして愛人への贈り物さえ出来たろう    *私はあんまり淋しいのだ私は人間としての生き物なのだむしろ人間に縛られた小猿らの様に憎み愛する事さえ出来なかったものだ    *私ははてしない悲しみに耕され冷たい赫土に埋もれて、眠りゆくけものの子だ私は幻を愛し、優しい母のふところのいつくしみにあこがれている又世界への華やかなる歩みに憧れている    *詩人が時代の先駆をした詩人が郷土を真実に生かしたそんな言葉が私の耳に流れては来ないかしらそんな言葉が地球のどこかで語られる時私のからだは墓場の火玉となって消えるだろう

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