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私の飼った犬
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私の飼った犬
斉藤弘吉
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Traducción Pagera AI
Original Public Domain
Chapter 3 of 14

秋田犬“出羽”号

秋田犬“出羽”は秋田県大館市のある畜犬商が種犬にしていた犬で、うす赤の、肩の高さ六十一センチぐらい、耳が小さく立ち、尾は太く左巻きで、体型も気性もまことによい犬でした。当時、私の家は山小屋ふうの洋館で、板敷でしたので、夜は家の中に入れて自由にしておきました。家から十六メートルばかり離れた中門のあたりに人が来ると、私たちにはその足音も聞こえないのに、出羽はもう玄関のドアの前に行って低くウーッとうなっているのです。家の者が来客と話して、警戒しなくてもよい人間とわかると、もう身を引いておとなしくなります。私が来客と話しているときは、いつも私のイスの側に横になっているのですが、客と議論したりして声高になると、出羽は立ってウーッと攻撃の姿勢をとるのでした。

夜、私たちは二階にやすみ、出羽は階段の下の洗面所のドアの前に寝て、私たちを守ってくれるのがいつものならわしでしたが、年の暮れのある夜半のことです。突然出羽が猛然とほえたので、びっくりして飛び起きました。出羽のほえ声は実に大きな威力のある声で、数百メートル離れた駅までも聞こえるほどだったのです。階段を下りて見ると、出羽は洗面所のドアに向かってほえているので、ドアを開けて見ると、上の回転窓が閉め忘れたとみえ開いているのです。ちょうど雪の降った晩でしたが、かなり遠い道路から畑をまっすぐに横切ってこの窓の下まで来て、またまっすぐに道路まで逃げて行った人間の足跡が、雪の上に残っていました。

当時は、有名な“説教強盗”と呼ばれた怪盗が出没し、どうにも捕えられなかったときです。私たちは、きっと説教強盗に違いない、開いていた回転窓から忍び込もうと近よって、出羽のあの猛烈な勢いに逃げたものだろうとウワサをしたことでした。説教強盗は、はいった家では必ず「番犬を飼いなさい」と説教していたそうです。

Chapter 3 of 14
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