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恢復期
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恢復期
神西清
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Chapter 2 of 39

六月十七日

一週間も降りつづいた雨で私はまた元気をなくして、ベッドのなかで暮すやうになつた。妙に白つぽく明るい部屋。雨は部屋の中までははいり込まない。コチンと凝固したやうな室内。ただこの冷たさ、この冷たさをどうしよう。この海辺の温泉町の気温が雨に敏感なのか、それとも熱病のあとの私の神経が冷気に敏感なのか。百合さんはお医者様を呼ぶ必要はないといふ。私の体温はほんの少しばかり上つたのに過ぎないから。けれどもしこんな微かな雨気が私の皮膚にこれほど悪い影響を与へるやうなら。……私はまたしても自分の身体について神経質な不安に落込まないわけには行かない。

(午後)

いま熱つぽい睡りから覚めたところ。にもかかはらず、気分はしつとりと静まつてゐる。私は自分の二の腕を眺める。乳白の皮脂の間にはもう美しい淡紅が入りまじつてゐる。私は部屋の一隅に百合さんの姿をまさぐる。その百合さんの眸が時をり本の頁から私の方へさまよふのを私は知つてゐるのだ。不安を消すために、夏よはやく来ておくれ。

Chapter 2 of 39
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