Chapter 1 of 1

Chapter 1

なが月下浣の日のゆふべ、

山下岩根垂る水の

玉のしづくに核ぐみて、

かつ熟みこぼし斎ひつゝ、

風に額づく茴香の

あゝ姉妹の二人もとよ。

化石もすらむ秋の木は

骨立ち強に呼吸つまり、

天つ御法のおん宣告に、

拗ねては、櫨も葉こそ縒れ、

孕婦ながら茴香は

優婆夷か、悩む色もなし

伴にはぐれし赤蟻の

飢ゑて足悩ゆむ湿り地に、

憐み顔のおとどひは

茎も軟らに額づきて、

手弱腕にそと乗せつ、

弘誓もさこそ、あゝ茴香。

●図書カード

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