Chapter 1 of 1
Chapter 1
上衣のボタンもかけずに
厠へつっ走って行った
厠のまん中に
くさったリンゴみたいな電灯が一つ
まっ黒な兵舎の中では
兵隊たちが
あたまから毛布をかむって
夢もみずにねむっているのだ
くらやみの中で
まじめくさった目をみひらいている
やつもいるのだ
東の方が白んできて
細い月がのぼっていた
風に夜どおしみがかれた星は
だんだん小さくなって
光をうしなってゆく
たちどまって空をあおいで
空からなにか来そうな気で
まってたけれども
なんにもくるはずもなかった
●図書カード