Chapter 1 of 44
一月一日
曇――雨。
聖戦第三年、興亜新春、万歳万々歳。
安眠、朝寝、身心平静。
おめでたう、ありがたう。
――起きるなり、水を汲みあげて腹いつぱい飲んだ、それは若水であり、そして酔醒の水であつた。
朝湯、香をいて自戒自粛、――回顧五十年、疚しくない生活、悔のない生活、あたりまへの生活、すなほにつゝましく生活したい。
朝酒、かたじけなし、酒を楽しみ味ふ境涯であれ。
雑煮のうまさ、酒がうまいやうに。
十時、私も祈願祝祷。
雨、あるいは雪になるらしい、雨もよし、雪もよし、たうとう雨になつた、しめやかな雨である。
転一歩――新一歩。
戦地のS君Y君へ賀状を書く、まことに千里同風の感がある。
風邪をひいたらしい、宵から炬燵にもぐつて読書。
門外不出、黙然独坐の一日であつた。
不眠、酔つぱらひが通る、さすがにお正月らしく。
Nさんに――
……生きてゐることは時々つらいとは思ひますけれど、やつぱり生きられるだけは生きて、酒を飲んだり句を作つたりする外ありません、……それが私の宿業であります。……