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短く語る『本の未来』
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短く語る『本の未来』
富田倫生
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Traducción Pagera AI
Original Public Domain
Chapter 6 of 11

本の美しさ

ウイリアム・モリスの作った羊皮紙の本を見た時は、思わず小さなため息をついた。「漂白した大理石に、黒曜石の細工文字を埋め込み、入念に磨きをかけたようだ」出まかせのそんな表現が頭に浮かぶ。紙の本しか知らない者には想像もできない至上の美を、羊皮紙の本は極めていたのだと、つくづく思い知らされた。

モリスは十九世紀のイギリス人だ。豊かな実業家の子として生まれ、詩作、建築、工芸とさまざまな分野に才能を発揮した。子供の頃から中世に引き付けられていた彼の表現の根には、過ぎ去った時代への強い憧れがあった。手仕事に美の範を求めたモリスは、理想の本の姿も十五世紀の初期印刷本に見いだした。ケルムスコット・プレスと名付けた工房を起こし、彼は晩年を本の美を極める作業にあてる。すみずみまで美意識を貫き通した本は、紙と同時に、羊皮紙でもわずかずつ刷られた。

最高級品は子牛。羊に加え、鹿の皮も材料とされた羊皮紙は、東方から伝わった紙が普及するまで、ヨーロッパで長く、本の素材として使われた。美しく破れにくく、質では明らかに紙に勝っている。だが高い。それまでは一冊ずつ書き写すしかなかったものが、活版印刷の技術が生まれ、本の大量生産が可能になったところで、羊皮紙は廃れだす。

印刷によって、本は知識を広く、素早く広めるメディアとして生まれ変わった。こうした本質的な新しい力を十分に活かすために、人は粗末な紙を選んだ。美は捨てたのだ。

電子本に対しては、「紙の手触り、美しさを捨てたくない」とする反発がある。けれどコンピューターと結び付くことで、新しい確かな役割が実現できるなら、私たちは本の美をもう一度破壊するだろう。そうなっても、私自身には異存がない。

Chapter 6 of 11
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