Chapter 1 of 1

Chapter 1

眼球は日光を厭ふ故に

瞼の鎧戸をひたとおろし

頭蓋の中へ引き退く。

大脳の小区画を填めるものは

困憊したさまざまの食品である。

青かびに被はれたパンの缺け、

切り口の饐えたソオセエジ……

オリーヴ油はまださらさらと透明らしいが

瓶一面の埃のために

よくは見えない。

眼球は醜い料理女である。

厨房の中はうす暗い。

彼女は床のまん中で

少しばかりの獣脂を焚く。

背の低い焔が立つて

油煙がそつと 頭蓋の天井に附く。

彼女は大脳の棚の下をそゝくさとゆきゝして

幾品かの食品をとりおろす。

さて 片隅の大鍋をとつて

もの倦げに黄いろな焔の上にかける……

彼女はこの退屈な文火の上で

誰のためにあやしげな煮込みをつくらうといふのか。

彼女は知らない。

けれども、それが彼女の退屈な

しかし唯一の仕事である。

大脳はうす暗い。

頭蓋は燻つてゐる。

彼女は――眼球は愚かなのである。

●図書カード

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