Chapter 1 of 3

Chapter 1

私は過去四年間を自動車と寢食を共にして、四六時中唯それのみを考へつゞけて來ました。所が此處に發令されました自工法案の實施に當り、弊社が逸早く特許許可會社の指令を受けた事は身に餘る感激事でありますが之と同時に今迄の樣に單に自動車の事を考へるばかりではすまされない重大責任を擔ふに至つたのであります。國家に對する義務として當然一日も早く自動車の大量生産を實現して國民大衆諸君に見えなければならないその責任の重且大もさる事乍ら、難事業とされてゐる自動車工業の克服を想へば寔に是男子一生の大業であり、私にとつては「男子の欣快」とする所であります。

それに就て少しばかり三年前の準備時代を回顧しつゝ私達工場の内部的觀察を御報告しておき度いと存じます。

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