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銀の匙
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銀の匙
中勘助
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Traducción Pagera AI
Original Public Domain
Chapter 4 of 75

四

私は家のなかはともかく一足でも外へでるときには必ず伯母さんの背中にかじりついてたが、伯母さんのはうでも腰が痛いの腕が痺れるのとこぼしながらやつぱしはなすのがいやだつたのであらう。五つぐらゐまでは殆ど土のうへへ降りたことがないくらゐで、帯を結びなほすときやなにかにどうかして背中からおろされるとなんだか地べたがぐらぐらするやうな気がして一所懸命袂のさきにへばりついてゐなければならなかつた。そのころ私は浅葱のしごきを胸高にしめ、小さな鈴と成田山のお守りをさげてゐた。それは伯母さんのくふうで、お守りはもとより怪我のないため、溝や川へ落ちないため、鈴は伯母さんが眼がかすんで遠くが見えないので、もしやはぐれたときにその音をききつけて捜しにこようといふのである。併し年が年ぢゆう背中からおりたことのない子には鈴もお守りも実はまつたく無用のものであつた。私は虚弱のため智慧のつくのが遅れ、かつ甚しく憂鬱になつて、伯母さん以外の者には笑顔を見せることは殆どなく、また自分から口をきくことはおろか家の者になにかいはれてもろくに返事もせず、よつぽど機嫌のいい時ですらやつと黙つてうなづくぐらゐのもので、意気地なしの人みしりばかりして、知らない人の顔さへみれば背中に顔をかくして泣きだすのが常であつた。私が痩せほうけて肋骨があらはれ、頭ばかり大きくて眼がひつこんでたため家の者はみんな 章魚坊主 章魚坊主 といつたが、自分ではわが名の□ぼうを訛つて □ぽん と名のつてゐた。

Chapter 4 of 75
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