Chapter 1 of 1

Chapter 1

こぞうさんの おきょう

新美南吉

やまでらの おしょうさんが びょうきに なりましたので、かわりに こぞうさんが だんかへ おきょうを よみに いきました。

おきょうを わすれないように、こぞうさんは みちみち よんで いきました。

キミョ

ムリョ

ジュノ

ライ

すると なたねばたけの なかに うさぎが いて、

「こぼうず あおぼうず。」

と よびました。

「なんだい。」

「あそんで おいきよ。」

そこで、こぞうさんは うさぎと あそびました。しばらく すると、

「やっ しまった。おきょうを わすれちゃった。」

と こぞうさんが さけびました。

すると うさぎは、

「そんなら おきょうの かわりに、

むこうの ほそみち

ぼたんが さいた

と おうたいよ。」

と おしえました。

こぞうさんは だんかへ いきました。そして、うさぎの おしえて くれたように、ほとけさまの まえで、

むこうの ほそみち

ぼたんが さいた

さいた さいた

ぼたんが さいた

と かわいい こえで うたいました。

きいて いた ひとびとは びっくり して 目を ぱちくり させました。それから くすくす わらいだしました。こんな かわいい おきょうは きいた ことが ありません。

そこで、ごほうじが すむと、だんかの ごしゅじんは すました かおで、

「はい、ごくろうさま。」

と、おまんじゅうを こぞうさんに あげました。

「ごちそうさま。」

と こぞうさんは おまんじゅうを いただいて たもとに いれました。

こぞうさんは、かえりに その おまんじゅうを、さっきの うさぎに わけて やる ことを わすれませんでした。

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