Chapter 1 of 2
「あやかしの皷」
はじめの方は、私にはそうとう読みづらかったが三分の一くらいまでくるとだんだん面白くなって、ついひきずられて読んでしまった。なかなか手にいった書きかたで、作者の並々ならぬ手腕を偲ばせるところもあるが、私は、主として不満に感じた点だけをならべる。
まず全体の筋が「あやかしの皷」につきまとう、因果ばなしめいた一連のお噺であるのが、私にはもの足りない。皷の「崇り」などは迷信だと極論するわけでもないが、迷信なら迷信で、もっと凄味と神秘の色とを濃くしてほしい。「崇り」を科学的に分析するなら、もっと徹底的に俎上にのせてメスをふるってほしかった。全体に中途半端の感じがする。現代と徳川時代とがまざりあっていて、よく融合していないといった感じだ。ちょうど、洋館の中で、椅子に腰をかけて、講釈師の浮世話をきいているようだ。最後のたたりは、ある未亡人の変態性欲で説明されているが――これとても現代式吉田御殿といった感じで、私にはぴったりこなかったが――それ以前にどんな崇りがあったのかは、田舎のおばあさんからたわいもない土地の昔話をきくようで一向たよりがなかった。
最後にばたばたと事件が整理されて、刑事や監獄などが出てくるのも、前の方の落ちついた空気をぶちこわしている。そうして、こういう話の大団円としては少しくどすぎるように思った。
要するに、作者が、皷につきまとう奇縁を全くの「偶然と一致」としてとりあつかうでもなければ、全く神秘そのものとしてとりあつかうでもないところに内容の分裂があって、そこからすべての欠点がきているように思う。