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森林と樹木と動物
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森林と樹木と動物
本多静六
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Chapter 7 of 17

(五)新緑

木々が若葉青葉に飾られた頃はすが/\しい景色です。一年中でもその若葉がどうしてあんなに紅や緑色の美しい色を現すのかといひますと、その色は葉の表面の部分、即、表皮や、葉の内部の細胞の中に紅色やその他の色が含まれてゐるためですが、それといふのも、若葉は葉の外部に丈夫な皮もなく、質も軟で弱いので、強い日光にあたるのをきらひます。それで葉の内部に色のある液を含んで、その強い光を遮るわけで、つまり若葉が自分自身の保護をするのです。しかし木の葉がだん/\に發達して、組織も丈夫になるに從ひはじめの色は次第に消えて、つひにその樹木特有の色となるのです。春の終りには葉が皆緑色になるのは、さうしたわけです。また木の葉ははじめから淡緑や、黄緑の色のものが多いのですが、その若葉の色も、その樹木の種類によつて、それ/″\異るものと見なければなりません。

同じ新緑のうちにも濃い緑や、淡い緑のもの、黄緑のものなどがあります。例へば日比谷公園横の道路や、青山赤坂通りなどに植ゑてある鈴を下げたような實のなる並木樹として立派なすゞかけの木は、明るい淡緑色をしてゐます。幹が青くつる/\した、葉の大きいあをぎりの若葉は黄色がかつた緑色です。かういふ風に葉の同じ緑色の中にちがひがあるのは、なぜかといふと、これは、主に葉の細胞内に含まれてゐる、緑色素といふものの濃さ淡さによるものです。この緑色素は顯微鏡で見ると美しい小さい緑の粒でそれを『葉緑粒』とよんでゐます。かく緑色は植物の、特に葉に固有な色で、われ/\は木といへば、すぐに緑の色を思ひ出さずにゐられないくらゐ親しい色です。

すゞかけのき

これで木の若葉の美しい色や、新緑の緑色のこともおわかりになつたと思ひますから、次ぎには樹木の生活について少しお話をしませう。第一に、青々した、木の葉といふものは、植物にとつては一番大切で、ちょうどわれ/\の心臟や胃や膓のような、生活上の必要な器官です。その葉の内部の葉緑粒は、毎日、日光の力をかりて、空氣中にある、人間に害をする炭酸瓦斯も吸ひ、そのかはりに、人間になくてはならない酸素をはき出して、砂糖や澱粉といふような含水炭素とよぶ養分を造り、それを葉から枝へ、枝から幹を下つて根に送つて、木全體の發育のための養分にし、その殘りは蓄へておきます。かういふ風に、葉が日光の力をかりて、その木自身を養ひ、生活をつゞけていく、この作用を『炭素同化作用』といひます。樹木の葉が青々と茂つてゐるのは、この重大な役目をはたすためです。そのために、木は若葉をふいてから次第に葉を丈夫にかため、夏の盛りを幸に、どん/\太陽の光と共に働いて、秋に紅葉をする支度や、冬が來ても困らない、養分の貯へをするのです。

Chapter 7 of 17
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