Chapter 1 of 1
Chapter 1
サガレン。絶北の植民地。―――こゝに小熊秀雄かつて行商の鍬と共に放浪し数年後藤原運またショベルを携えて徘徊した
小熊秀雄は自然を最もよく背后の凹影に見た藤原運は自然を最もよく前面の凸影に見た
小熊秀雄は社会を痴呆せる自然の背后におしかくした藤原運は社会を麻痺せる自然の前面におしすゝめた
小熊秀雄は生来の饒舌でしゃべりにしゃべりまくった藤原運は労働者の簡素さでけんそんに語った
小熊秀雄は自然弁証法の詩人だった藤原運は唯物弁証法の詩人であるだろう
小熊秀雄は時代の誤りを持つが故に多く愛され藤原運は絶対に正しいが故に少く愛されただが、ルンペンの愛が少数のプロレタリアートの愛に替え難いとしても、わたしらは時として寂しいなぜなら、わたしの内にあるいくたのサガレンを正しく、そしてもっと多く世界に伝えることは、同志藤原の任務だから
●図書カード