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八犬伝談余
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八犬伝談余
内田魯庵
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Terang
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Sepia
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Chapter 5 of 5

5

里見氏八女

匹配百両王姫を御す 之子于に帰ぐ各宜きを得 偕老他年白髪を期す 同心一夕紅糸を繋ぐ 大家終に団欒の日あり 名士豈遭遇の時無からん 人は周南詩句の裡に在り 夭桃満面好手姿

丶大

名士頭を回せば即ち神仙 卓は飛ぶ関左跡飄然 鞋花笠雪三千里 雨に沐し風に梳る数十年 縦ひ妖魔をして障碍を成さしむるも 古仏因縁を証する無かるべけん 明珠八顆都て収拾す 想ふ汝が心光地に凭て円きを

里見義成

依然形勝関東を控ふ 剣豪犬士の功に非ざる無し 百里の江山掌握に帰す 八州の草本威風に偃す 驕将敗を取るは車戦に由る 赤壁名と成すは火攻の為めなり 強隣を圧服する果して何の術ぞ 工夫ただ英雄を攪るに在り

『八犬伝』を読むの詩 補

姥雪与四郎・音音

乱山何れの処か残燐を吊す 乞ふ死是れ生真なりし 薄命紅顔の双寡婦 奇縁白髪の両新人 洞房の華燭前夢を温め 仙窟の煙霞老身を寄す 錬汞服沙一日に非ず 古木再び春に逢ふ無かる可けん

河鯉権守

夫れ遠謀禍殃を招くを奈ん 牆辺耳あり防を欠く 塚中血は化す千年碧なり 九外屍は留む三日香ばし 此老の忠心日の如し 阿誰貞節凜として秋霜 也た知る泉下遺憾無きを を舁ぐの孤児戦場に趁く

蟇田素藤

南面孤を称す是れ盗魁 匹として蜃気楼堂を吐くが如し 百年の艸木腥丘を余す 数里の山河劫灰に付す 敗卒庭に聚まる真に幻矣 精兵竇を潜る亦奇なる哉 誰か知らん一滴黄金水 翻つて全州に向つて毒を流し来る

里見義実

百戦孤城力支へず 飄零何れの処か生涯を寄せん 連城且擁す三州の地 一旅俄に開く十匹の基ひ 霊鴿書を伝ふ約あるが如し 神竜海を攪す時無かる可けん 笑ふ他の豎子貪慾を逞ふするを閉糴終に良将の資となる

以上二十四首は『蓉塘集』中の絶唱である。漢詩愛誦家の中にはママ諳んずるものもあるが、小説愛好者、殊に馬琴随喜者中に知るものが少ないゆえ抄録して以てこの余談を結ぶ。

(昭和三年四月仏誕会)

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