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きむらたけしくんと、いもうとのきみ子ちゃんは、まほうつかいといわれる林さんのうちへあそびに行って、いろいろふしぎなことをみました。
おしまいには、林さんは、たかい木のてっぺんから、こうもりのように、そらへとんでいってしまいました。林さんは、にんげんひとりだけをはこぶプロペラをはつめいしていたのです。
そのあとで、林さんとそっくりのすがたをしたしょうねんが、木のうしろからあらわれて、いままでのふしぎなことをいろいろとせつめいしてくれましたが、たけしくんが、
「林さんは、てんにのぼったまま、かえってこないのかしら」
といいますと、しょうねんは、さもおかしそうにわらいだしました。
「林さんは、もうとっくにうちへかえっているよ。
むこうのはらっぱにおりて、そこのひみつのいり口から、うちへかえったのさ。ぼくたちもはいってみよう。
うちの中にもふしぎなものがたくさんあるんだよ」
しょうねんがそういってさそいますので、たけしくんときみ子ちゃんは、しょうねんのあとについて、せいようかんの中へはいっていきました。
おもいドアをあけて、うすぐらいげんかんにはいり、ひろいろうかをおくのほうへすすんでいきました。
すると、むこうのドアをひらいて、そこからみょうな人がでてきました。
ぴったりみについた、むらさきいろのビロードのふくをきています。そのかたやむねに、ぴかぴかひかるきんいろのかざりがついています。
あたまにはむらさきビロードの三かくぼうしをかぶっています。サーカスのきょくげいしのようなかっこうです。
よくみると、それは林さんでした。めがねも口ひげもなくなっています。あれはつけひげだったのでしょう。
「たけしくん、きみ子ちゃん、こっちへおはいり。おもしろいものをみせてあげるよ」
しょうねんといっしょに、ふたりがそのへやにはいりますと、林さんは、たんすのひきだしから、きいろの中に、くろいてんてんのあるけがわを二つとりだしました。
「これはひょうのけがわだよ。たけしくんもきみ子ちゃんも、もうじゅうのひょうになってみたいとはおもわないかね。このけがわをきれば、すぐにひょうになれるんだよ。
目のところにはガラスがはめてあるから、そとがよくみえるし、口の中には、ふえがついていて、それをふくと、ひょうとそっくりのうなりごえがでるんだよ」
それをきくと、たけしくんもきみ子ちゃんも、一どひょうになってみたくなりました。林さんはふたりのかおいろをみて、手ばやくひょうのかわをきせてくれるのでした。
けがわはぴったりとみについて、たいへんきもちがいいのです。
たけしくんは、へやの中をのそのそとはいまわってみました。
そしてけがわの口の中にあるふえをふきますと、
「ウォーッ、ウォーッ」
という、おそろしいうなりごえがでるのです。
きみ子ちゃんもかわいいめすのひょうになってたのしそうにあるいています。そして、ときどき、ふえをふいているらしく、
「ウォーッ、ウォーッ」
というこえがきこえてきます。
にんげんの足と、ひょうのあと足とは、まがりかたがちがっているのですが、けがわになにかしかけがしてあるらしく、ちょっとみたのでは、それがわかりません。
うつくしいきょくげいしのふくをきた林さんは、どこからかながいむちをとりだして、
「ピシッ、ピシッ」
と、それをならしました。
「おい、たけしひょうにきみ子ひょう。どうだね、もうじゅうになって、たのしいかね」
そうきかれたので、ふたりは、ふえをふいてこたえました。
「ウォーッ、ウォーッ」
「ウォーッ、ウォーッ」
林さんはわらいだしました。
「わははは……。うまいうまい。すっかりひょうになってしまったね。ところで、わしはもうじゅうつかいだから、きみたちにげいをさせなければならない。さあ、ふたりとも、あと足でたちあがって……。
あと足でたちあがって、ちんちんをするのだ」
そして、ピシーッとむちがなりました。
たけしくんもきみ子ちゃんも、あと足でたち、まえ足をもがもが、やっています。
「よろしい。こんどはすこしむずかしいよ。このわの中をとびこえるんだ」
林さんは、どこからかはりがねのわをもちだしてきました。
「ほんとうは、このわにわたをまいて、アルコールをしませて火をつけるんだ。その火のわの中をとびこえるんだよ。
いまはれんしゅうだから、火はついていない。
いいかい。むこうからはしってきたいきおいで、この中をとびこすんだ。さあ、しっかり」
そして、むちがくうちゅうで、ピシーッ、ピシーッとなるのでした。
ふたりともいくどかやりそこないましたが、たけしくんは、とうとうわの中をとびぬけることができました。
きみ子ちゃんは、どうしてもできないので、あきらめて、そこへうずくまってしまいました。
「よし。きょうは、れんしゅうはこれまでにしておこう。そして、きみたちをなかまにひきあわせてやるよ」
林さんは、みょうなことをいって、ピシーッとむちをならしました。
「さあ、あるくんだ。わしについてくるのだ」
そういって、さきにたって、ドアのそとにでると、うすぐらいろうかを、もっとおくのほうへはいっていきます。
たけしひょうときみ子ひょうは、のそのそとそのあとからついていきました。
ろうかのおくに、とくべつにがんじょうなドアがありました。林さんは、それをひらいて中にはいり、まるでいぬでもよぶように、チョッ、チョッと、したをならしながら、ふたりを手まねきしました。
ふたりは、なんのきもつかず、そこへはいっていきましたが、あっというまに、へんなものの中へおいこまれてしまいました。
てつぼうのはまったろうやのようなものでした。
林さんは、ふたりをそこへおいこむと、いり口のとびらにガチャンとかぎをかけました。
それは、もうじゅうをいれるおりだったのです。みると、そのひろいへやには、たくさんのおりがならんでいました。
そして、それらのおりの中には、ライオンやとらやくまやひょうや、いろいろなもうじゅうが、べつべつにいれてあるのです。まるでどうぶつえんのようでした。
ひょうになったたけしくんときみ子ちゃんは、そのどうぶつえんのおりの中へいれられてしまったのです。
ふとみると、じぶんたちのいれられたおりのすみに、なにか大きなものが、うずくまっていました。
ピシーッ。おりのそとで、林さんのむちがなりました。
すると、うずくまっていたやつが、ぬくっとたちあがったではありませんか。
とらです。大きなとらです。とらは、「ウォーッ」とうなって、らんらんとかがやく目で、たけしひょうときみ子ひょうをじろっとにらみつけました。
ああ、たけしくんときみ子ちゃんは、大きなとらのいるおりの中へいれられたのです。
ほんとうのひょうなら、とらにまけないかもしれませんがこちらはにんげんの子どもです。とらにかなうわけがありません。
ああ、どうしたらいいのでしょう。
ふたりは、いまにもとらにくいころされてしまうのではないでしょうか。