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平和事業の将来
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平和事業の将来
大隈重信
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Asli Public Domain
Chapter 3 of 8

〔平和を破る者は誰ぞ〕

それから、全体、今日の世界は、何故にかくの如く武装を為しているか。驚くべき武装を為しているのである。千八百七十年以来、仏蘭西と独逸の戦争以来、世界の強国の武装の盛んなこと、前古無比である。また近世にて、日露の戦後、世界の海軍の拡張の盛んなること、前古無比である。今日軍備の拡張のために、世界に冠たる富をもっている英国もなお且つ財政の困難に遭遇して、この財政のために英国は大いに混雑を惹起しているのである。多分、昨今の英国の情態はほとんど戦場の如き有様を呈しているであろうと思う。かくの如き混雑を何から惹起したかというに、大部分は軍備である。昨年独逸に於ては財政、即ち増税案のために高名なる大政治家――ほとんど十年間、独逸の大宰相としてビスマーク公に譲らぬところのピュロー公は、議会の反対に苦しんで、到頭自分の地位を抛つの已むなきに至ったのであります。而してその案は全然破れたのである。亜米利加合衆国に於ても、これはもっとも新たに興ったところの国であるが、今日合衆国の富の勢いはほとんど世界を圧するくらいであるに拘わらず、海軍の拡張のために財政に不足を告げ、税を増さなければならぬということになった。而して、今増しつつあるのである。全体、合衆国は世界に敵のない国である。世界に於いて、合衆国ほど平和の国はないのである。ところが、世界の軍備大拡張に対しては、合衆国そのものも武装を解く訳にいかないのである。余儀なく武装せねばならぬので、ついにこのたびの海軍拡張となったのである。驚くべき大拡張となって、巨額の金を投じたのである。

日本また然り。日本の如き幼稚なる国に於て、富の最も発達しない国に於て、突然軍備を整えなければならぬということは、よほど困難である。ところが、日本は増税はさておいて、この頃議会には税を減じてくれろという声が起っている。しかしながら、税を減ずるために日本の艦隊を潰す訳にはいかぬだろうと思う。何というても、武装を解くことが出来ないという、今日の情態であるのである。

それからもう一つ、ここに不幸なることがある。これは私はあまり細かく言うことを好まぬが、事実を事実として述ぶることは最も必要である。これを述べなければ、真の平和は来らぬのである。まず日本人、東洋人というものの世界に於ける地位は、どうであるかということが最も必要である。全体、平和を破るのは何処であるかというと、文明の程度の低い国が、平和を破るのである。欧羅巴の一世紀間の平和をして、不安の念を抱かしめたのはバルカンである。東洋に不安の念を懐かしめたのは満韓である。即ち支那である(拍手)。

Chapter 3 of 8
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