Kembali
塩原新七不思議
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塩原新七不思議
大町桂月
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Tema
Terang
Gelap
Sepia
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Terjemahan Pagera AI
Asli Public Domain
Chapter 4 of 7

四

明くれば、雨の降りさうな天氣也。雨具を用意して出で、箒川の左岸を上る。鹽釜を過ぎて、畑下戸温泉を路の左右に見る。『當年「金色夜叉」を草せし尾崎紅葉の宿りしは、こゝの温泉なり』と、裸男例の知つた風の事をいふ。門前温泉を通り蓬莱橋を渡りて箒川と別れ、古町温泉を經て、行くこと凡そ十町、左折して八幡宮に詣づ。祠前に偉大なる杉二本相接して立つ。一はやゝ大にして、一はやゝ小也。大なる方を測りしに、凡そ五抱へありき。『見よ、枝みな下垂す。依つて逆杉と稱す。即ち鹽原七不思議の一なり』と、裸男説明すれば、『これは別に何も不思議には非ず。我等の新七不思議の方が、ずつと不思議なり』と十口坊いふ。しばし休息して引返す。『おい/\十口坊、新七不思議とは云ふものの、まだやつと三つだけに非ずや』と云ふ折しも、十口坊は手に持ちたる蝙蝠傘をぱツと開きて、さしかざす。蝙蝠傘をさしたればとて、何も不思議は無けれど、色黒々と鬼を欺く十口坊、南海苦熱の濱に長じて、上京するまでは帽子を被りたることも無き荒男、平生蝙蝠傘などさしたることなし。さゝぬといふよりも、持たぬといふ方が當れるかも知れず。その平生を知れる我等より見れば、所持するといふことが、既に不思議也。さまで暑くもなきに、之をさすに至つては、益不思議ならずんばあらず。之を新七不思議の第四となさむ。

Chapter 4 of 7
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