Chapter 4 of 7
(四)
あくる日になつて、いつもかかさずに遊びに来るおきいちやんが来ませんでした。
『おまへ、おきいちやんと喧嘩でもしたんぢやないのかい』とお母さんは自分が云ひ出した三又土筆のことから、二人の仲よしが、仲の悪い悪い二人になつたとは知らずに訊きました。
『ううム』『ううム』とおたあちやんは頭を横に振つてゐました。
そのあくる日も、そのあくる日も、おきいちやんは遊びに来ませんでした。
お母さんは『喧嘩したんだらう』と幾度訊いても、そのたんびおたあちやんは、頭を横に振つてゐるばかりでした。
そのうちに、おきいちやんが病気で寝てゐると云ふことを近所の人から聞きました。
おたあちやんのお母さんは『見舞にいつておいで』と云つても、おたあちやんは、いつも気のない返事をして、却々行きさうにもしませんでした。
おたあちやんは、今は、あの日のことが沁み沁み後悔されて『悪いことをした』と心で思ふやうになりました。それがだんだん嵩つて来て濁つてゐたおたあちやんの心は、一日一日と澄んで来るやうになりました。おたあちやんは、三又土筆のことをお母さんに話して了ふかと思ひましたが、それでは却つてお母さんに心配をかけるだらうと、一人で胸をいためて居りました。
幾日かたつうちに春もすぎて、夏が来ました。今年も湖の上に虹の橋のかかる頃となりました。
今年も虹は
湖の上さ
太鼓橋かけた
去年も虹は
湖の上さ
太鼓橋かけた
昔も 今も
湖の上さ
太鼓橋かけた
湖の上さ
百間幅の
太鼓橋かけた
今日も、村の子供達は、湖の岸に立つて唄つて居りました。