Kembali
森林と樹木と動物
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森林と樹木と動物
本多静六
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Terang
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Sepia
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Asli Public Domain
Chapter 6 of 17

(四)春のおとづれ

みなさんがお正月の休みを終へて、再び寒風の中を學校にお通ひになるときには、多くの木は芽も吹かず、枯れたように眠つてゐますが、中にはまんさくのように寒い風にも堪へて早く、一二月の頃に枯れ木のような小枝に、黄色い花を着けたり、また蝋梅のようにもっと早く雪の中で香りたかく咲き誇るものもあります。そんなのを見ると、もう春が來たのかと思はれます。蝋梅はもと支那の産ですが、早く我國に移植され多くは庭木として灌木状をしてゐます。東京では一月中旬に蕾を開き初め、二月に至つて滿開し、三月の上旬まで花を開きつゞけてゐます。

蝋梅についで早く花をひらくまんさくは日本だけの山中に、自然に生えるもので、木曾や日光地方に多く、また庭木となつて植ゑられてゐるのもあります。

以上の二つは、冬から春にかけて花のさく木の中で、特に目に立つものです。つぎにだん/\と寒さも薄らぎ、やがて三月になると、梅、れんぎょう、ぢんちょうげ等の世界となります。蝋梅や梅のように美しく花をつける樹木を『花木』とよびますが、梅は早春の花木中でも第一の木として、昔から愛せられて、庭木や盆栽にも仕たてられるものです。梅はもと/\土地の乾いた日當りのよいところに適し、陰地には、ふさはない木ですから、梅林を作るには、なるべく南向きで土地の傾斜したところがよいのです。樹木には、それ/″\日陰地にもよく育つ木や、また日陰と日陽の中間のところを好む等、種類によつて、土地に適、不適があります。その中で、日陰にもよく育つ木を『陰樹』とよび、日陽地を好む木を『陽樹』といひます。樹木のこの性質を知つておくことは大切なことで、庭木を植ゑかへるときにも、山に木を植ゑつける時でも、それ/″\の木が陰樹か陽樹かによつて、それ/″\適當な土地に植ゑることが必要です。

さて梅の花も終りとなり、日毎に風も暖かになりますと、桃の節句の桃の花、油菜の花がさきます。野や畠にはたんぽゝが黄色くかゞやいてきます。その頃には河岸の柳も芽を出して、やさしい枝を風に靡かせはじめます。それからだん/\に、冬の間すっかり葉を落してゐた落葉樹も一齋に、ぽか/\した日を浴びて緑の若芽を出しはじめます。野に山に陽炎が燃えてきます。ところによつて芽を吹く時季はむろん違ひますが、東京附近では三月の中旬頃から五月頃までに、芽を出します。やまざくらのように緑色の若葉をもつもの、生け垣に多いかなめもちのように紅色のうつくしい若芽をもつものもあり、またまつは緑の針を出して一二年も持ちこたへた古い葉を少しづゝ替へていきます。それから、かや、まき、とべら等の常緑樹の發芽を最後に五月の上旬頃には、すべての樹木は春の着つけを終つて、ついで來る夏の生活の備へをします。

Chapter 6 of 17
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