Kembali
松本たかし句集
Table of Contents
松本たかし句集
松本たかし
Reading Settings
Ukuran font
18px
Tema
Terang
Gelap
Sepia
Pelindung mata
Spasi baris
Mode baca
Terjemahan Pagera AI
Asli Public Domain
Chapter 3 of 7

夏

夏めくや底を貫く滑川

凭り馴れて句作柱や夜の秋

足袋をぬぎ袴をとりて涼しけれ

大島と久に逢ひ見て梅雨晴れぬ

咲のぼり梅雨晴るゝ日の花葵

遠雷や波間々々の大凹み

道標のみ便り行く夏野かな

こと古りし招魂祭の曲馬団

幟の尾垂れたる見えて夕庇

抱き画く大提灯や祭人

いづくかに月夜囃子や祭月

荒れ/\し人も神輿も息みをり

避暑人の佇む海人が門火かな

踊見る踊疲れを憩ひつゝ

踊らまくさかさ頬冠したりけり

うつし世の月を真上の踊かな

通り雨踊り通して晴れにけり

我見たりなかのりさんの木曾踊

山々に木曾の踊も終りけり

唯うすき岐阜提灯の秋の草

泳ぎ子や獣の如くすこやかに

花火見の彼の幇間も老しかな

榛名湖を見て戻りたる一ト昼寝

温泉の宿の昼寝時なる長廊下

胡桃の実見えて寝ころぶ避暑の宿

二つづゝ放り出しけり早苗束

早苗束放る響の谷間かな

早苗束膝に当てゝはくゝりけり

病夏まけとかくしがたなくやつれけり

コレラ出て佃祭も終りけり

汗かきて日々恙なくありにけり

汗じみし人のからだとさはりけり

脱ぎ懸けし帷子月のおばしまに

羅をゆるやかに著て崩れざる

取出し著たる昔の透綾かな

影遠く逃げてゐるなり砂日傘

砂日傘びよう/\と鳴る下に在り

砂日傘小犬がくゝりあるばかり

ロン/\と時計鳴るなり夏館

小鼓の稽古すませし端居かな

一夏の緑あせにし簾かな

おばしまの走りかくれて青簾

洗髪乾きて月見草ひらく

洗髪乾きて軽し月見草

風鈴や移り住たる夕心

風鈴や早鳴り出る懸くるより

すぐ前に塀がふさがる釣荵

蚊遣火や夕焼冷むる淡路島

渦巻の残りすくなき蚊遣香

柄を立てゝ吹飛んで来る団扇かな

縁側の団扇拾うて下り立ちし

日蔽舟扇使ひの人見ゆる

手巾の白々として男かな

白々とハンカチーフや老紳士

落ちかゝる夏座布団や縁のはし

縁端に放りおこしたる円座かな

氷食ふ二階の欄にまたがりて

金魚大鱗夕焼の空の如きあり

螢籠飛ぶ火落つる火にぎやかに

金粉をこぼして火蛾やすさまじき

余花の雨布団の上の鼓かな

桐の花散りひろごれり寺静

桐の花散りひろがりぬ掃かぬまゝ

百日紅こぼれて庫裡へ石畳

えごの花かゝりて蜘の糸見えず

釣人にえごの落花も絶えしかな

雨音につゝまれ歩く若葉かな

柿落葉いちゞるしくも光るなり

下闇に遊べる蝶の久しさよ

鈴懸の緑陰よろしテニス見る

屋根越しに見ゆる実梅に端居かな

夏萩のとぼしき花の明らかに

牡丹の花に暈ある如くなり

花深く煤の沈める牡丹かな

夜の如き帷垂れたる牡丹かな

牡丹の葉を起しつゝ開き行く

牡丹に垂れし帷の重さかな

花に葉に花粉たゞよふ牡丹かな

中庭の掃かで塵なき牡丹かな

牡丹の残りし花に法事かな

左右より芍薬伏しぬ雨の径

門川の野茨の或は匂ひ来て

榛名湖にて草あやめ茶屋の男に掘らしめし

一面の著莪にさゞめく洩日かな

庭山や薪積みたる著莪の中

庭に出て夕餉とるなり月見草

紫陽花の大きな毬の皆褪せし

今年の二度ある梅雨や額の花

向日葵の葉の真黒に焦げたるも

向日葵に剣の如きレールかな

甘草や昨日の花の枯れ添へる

くつがへる蓮の葉水を打すくひ

橋裏に吸ひ着いてゐる蓮広葉

睡蓮の葉に手をかけて亀しばし

ほの/″\と泡かと咲けり烏瓜

青蔦の這うて暗しや軒の裏

青蔦の蔓先の葉の小さきかな

この夏の一番甘き西瓜なり

西瓜より冷きものゝのぼりけり

行人の背にある蝿や麦の秋

麦秋の藤沢在の閑居かな

手をば刺す穂麦の中を来りけり

萍に亀乗りかけてやめにけり

萍に松の緑を摘み捨てし

Chapter 3 of 7
|