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赤いカブトムシ
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赤いカブトムシ
江戸川乱歩
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翻訳 Pagera AI
原文 Public Domain
Chapter 10 of 12

10

小林くんと、木村くんと、ユウ子ちゃんと、井上くんと、ノロちゃんの五人は、ルビーのカブトムシをとりかえすために、まほうはかせのすみかのちか室へはいっていって、いろいろなおそろしいめにあいました。ちか室には広いへやがあって、五人がそこへはいると、へやのまん中に、むくむくとみょうなかいぶつがあらわれました。

たまごに目と口をつけたような、おかしなやつです。それが、見るまにだんだん大きくなり、おとなの三ばいもあるような大にゅうどうになってしまいました。そして、

「わははははは……。」

と、かみなりのようなわらい声が聞えました。

みんなは、思わずもと来た方へにげだしましたが、せまい入口にはいこもうとして、ふと、うしろを見ますと、おやっ、あのかいぶつは、どこへ行ったのか、かげも形もなくなっていました。かいちゅうでんとうでよくしらべてみましたが、へやは、まったくからっぽで、なにもないのです。

四方のかべはかたいコンクリートで、どこにも出口はありません。

みんなは、いよいよきみがわるくなってきました。

「へんだなあ。あいつ、けむりのようにきえてしまったよ。」

ノロちゃんが、とんきょうな声でいいました。

「あっ、ごらん。なんだか、動いてる。」

またしても、じめんから、ぶきみなものがわき出してきました。まっさおなものです。それが、かおからかた・はら・こしとせり出して、おとなぐらいの大きさになりました。

「あっ、せいどうのまじんだ。」

小林くんがさけびました。ずっと前に、少年たんていだんがたたかった、あのおそろしい、せいどうのまじんと、そっくりなのです。

せいどうでできたような、青いやつです。耳までさけた口で、にやにやわらっています。それが見る見る大きくなって、やっぱりおとなの三ばいほどになりました。あたまがてんじょうにつかえています。

「ギリリリリ、ギリリリリ……。」

はぐるまの音がします。せいどうのまじんの中に、はぐるまがしかけてあるのでしょうか。

「わはははは……。ちんぴらども、よく来たな。きみたちのさがしていた赤いカブトムシは、このわしが持っている。ほら、ここにあるよ。」

まっさおなきょじんは、おそろしい声でそういうと、耳までさけた口をぱっくりあけました。

三日月がたの、まっ黒なほらあなのような口です。

その口から、ぺろぺろと赤いしたを出しました。そのしたの上に、まっかなカブトムシが乗っているではありませんか。

せいどうのまじんは、口の中に、ルビーのカブトムシをかくしていたのです。少年たちはそれを見ると、思わず、「あっ。」とさけびました。しかし、あい手はおそろしいかいぶつです。とりかえすことは、とてもできそうにありません。

「わははは……。これがほしくないのかね。おくびょうなちんぴらどもだな。くやしかったら、わしのかおまでのぼってきてみろ。そして、わしの口の中から、これをとり出せばいいのだ。わはははは……。そのゆうきが、きみたちにあるかね。」

せいどうのまじんは、少年たちをばかにしたように、大きなからだをゆすってわらうのでした。

「ちくしょう。みんな来たまえ。」

おとうさんから、けんどうをならっている、井上一郎くんはそうさけぶと、いきなり、かいぶつの右の足にしがみついていきました。

あいては、おとなの三ばいもあるきょじんです。まるでこれは、すもうとりの足に赤んぼうがしがみついているようです。

そのとき、ガラガラガラッという、おそろしい音がして、あたりが、ぽっと明るくなりました。やみになれたみんなの目には、まぶしくて、目をあけていられないほどの明るさです。

いったい、なにごとが起ったのでしょう。やっと目を開いてみますと、ふしぎふしぎ、ちか室のてんじょうがなくなっているではありませんか。

てんじょうがきかいじかけで、両方へ開くようになっていたのです。上には、青空が見えています。たいようの光が、さんさんとあたりにかがやいています。

「あっ、たいへんだ。井上くんが……。」

小林くんが、びっくりしてさけびました。ほんとうに、たいへんなことが起っていたのです。

ごらんなさい。せいどうのまじんのからだが、すうっとちゅうにういたかと思うと、そのまま、ふわふわ空へまい上がっています。足にしがみついた井上くんも、いっしょにつれたままです。

これも、まほうはかせのまほうでしょうか。

それにしても、これから、いったいどんなことが起るのでしょう。

Chapter 10 of 12
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