Chapter 1 of 5

Chapter 1

塾長、閣下、諸君、今日は慶應義塾五十年の祭典にご案内を受けまして祝辞を述ぶることは私にとって最も光栄、且つ最も興味を感ずる次第である(拍手)。既にただいままで福沢〔諭吉〕先生に対する種々の御話は、先生の薫陶を受けられた尾崎君に依て、ほとんど遺憾なく説明されたのであります。私の言わんとすることも大部分は既に言い尽されたのであります。しかしながらまだ残っている事がある。最も必要な事が残っている。これは私が福沢先生の友人とし――友人といえば少しく鳴滸がましいようでありますが、最も畏敬するところの先輩とし、ほとんど三十五年間の深い交わりのあった関係からして、ただいま御話しにならぬその以外の、最も必要なる事をこの席に於て述ぶることは、最もこの紀念祭に肝要であると信ずるのであります。

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