Chapter 1 of 1
Chapter 1
黄昏時を四五分すぎたあと、
薄闇を縫ふて、紅い々々燈の華が、
冬咲きの仏相花のやうにちらつく。
昔の栄華を夢見る古るい街、
傾むいた軒を並べて、
底深く静まりかへる。
蔦の生へた石垣からは、
亡びの色調を帯びた虫の歌。また、
たく/″\と流れる溝のなげかひ。
私は古るい街の巷に迷ひこんだ、
何処かへ逃げ道を見出さうとした、
古るい街は逃すまいと抱きつく。
私と亡びゆく古るい街、
その間に永い哀情が横たへ、
深かい/\闇に沈んでゆく。
●図書カード