Chapter 8 of 15
菊
わたしが扉のノヴを後手に閉めて、室内にゐるかれを顧たとき、ちらりと青い菊がかれをかくした。かれは有数の考古学者で、ポリネシアの上代星座学を翻訳してゐる男だが、いつも卓子を海のいろをした天鵞絨で覆つて、その上に菊のやうな顔をのせてゐるのである。
かれはすぐさま話してくれる。かれの妻君は、大晦日の夜ふけ、場末で春をひさいで検挙られた女であることを。さうしたかの女が、これはまた婆羅門教の Veda の、パセティックな讃仰者であることも附け加へながら。かれはその朦朧性についてほめたあげく、白痴のやうにわらふのである。
かれはポリネシアの古典学における、よきエピゴォネンだ。また思ふに、かれの心はあたらしい!