Chapter 1 of 1

Chapter 1

いらだたしき一夜、

群集と巡査とは睨みあい、

街燈の瓦斯の灯も常より青し。

窓硝子のやぶるる音に、

喜びて叫ぶ声、恐ろしき鬨の声、

馳せちがう民衆と警官の剣鞘のおと。

哀れにも暴君のくるしむ姿、

われもまた群集ともろ共に手を打って

幾度か「バンザイ」を叫ばんとせしが、されど……

かの家にはわが椅子あり、

わがペンもあり、

かかる時なお忘れえざるわがパンの家。

雨のごとく石はふり、

群集は狂おしく鳴りわめく、

いらだたしき銀座の一夜。

(『近代思想』一九一三年三月号に発表)

●図書カード

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