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ここに編纂したものは、必ずしも研究論文ではない。と共に一時的な時評でもない。私は、時代の評論とでも云うべきだと考える。大体から云うと、ごく啓蒙的なものであるから、無用な先入見にわずらわされない読者には、読みよいものかと思われる。

日本は世界的な角度から見られねばならぬ、というのが私の一貫する態度だ。これは、日本は民衆の立場から見られねばならぬということに基くのである。ここに私が民衆と呼ぶのは、支配者が考えるあの民衆のことではなくて、自主的に自分の生活を防衛して行こうとする民主的な大衆のことだ。

すでに一旦発表されたものに相当手を加えたものであるが、特に日本型ファシズムに就いての私の予備概念には多少の変化があるのだが、その点に関係する部分を徹底的に書き改める都合がつかなかったのは残念である。

この本と直接関係のある拙著を三つ挙げておこう。第一は『日本イデオロギー論』(白揚社)、之は大部分理論的なものである。第二は『現代日本の思想対立』(今日の問題社)、之は時評集である。第三は『思想と風俗』(三笠書房)で、日本の教育と宗教との風俗描写を含んでいる。そして本書は第一と第二の中間に立つものだ。

一九三七・三・一五

東京戸坂潤

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