訳者解説
米国医学史学会を創設し、晩年はオクスフォード大学の内科学欽定教授であり英国医学史学会の会長であったウィリアム・オスラー卿が英米の学生に読むように推薦したノイバーガーのこの本は、体系的に整頓された優れた本である。しかし残念なことに難解な本である。私にとって理解できない部分もあったが、まず第1巻前半の原始医学の部分だけを翻訳した。原始医学と東洋医学に限ったのはこの先には訳者の理解できない部分があり、理解できても日本語にするのに困難を感じたためである。
原始医学の部分には、メソポタミア、古代エジプト、古代ペルシャ、イスラエル、インド、中国・日本の医療における、魔術が関係する呪術(ゴエギア)、宗教による神働術(テウルギア)、および経験医療、について詳しく論じられている。現在アメリカなどで流行している代替医療、伝統医学、漢方医学と関連して、興味を覚えた。
第1巻(https://archive.org/details/historyofmedicin01neub/)および第2巻(https://archive.org/details/historyofmedicin02neub/)の英文原著はインターネットから閲覧できるので、興味ある人達は英文で続きを読んで欲しい。原始医学からギリシャ医学への発展の経過、ヒポクラテスやガレノスで代表されるコス島医学と学問的には現代医学に近いクニドス島医学の問題、現代の病院のように進歩していたアラビア医学、などについてのノイバーガーの記載は非常に優れている。残念なことにルネッサンス以降の部分は第1世界大戦のために刊行されなかった。
読者の参考のために、訳出しなかった第1巻後半からの見出しを下記にあげておく。
第1巻後半
古代古典時代における医学
序言
ホメロス的医療と祭司医学
アスクレピアド医師、体育専門家、植物薬剤師
医学理論の始まり
医学校
クニドス、コス、シチリア学派
ヒポクラテス
ヒポクラテス集典
ドグマティスト
アレキサンドリア時代の医学
ヘロピロス、エラシステアトスおよび彼らの弟子たち
エンピリスト学派
外科医と薬理学者たち
ギリシャ医学のローマへの翻訳
アスクレピアデス
メソディスト
ローマの百科全書学者。ケルスス、プリニウス
処方と薬局方
ニューマティストと折衷主義者
アレタイオス、ルポス、ソラノス
付記:解剖学と生理学
ガレノス
アンティロス
古代衰退における医学
一般状態
文献
教会神父の著述における
タルムドにおける医学
中世における医学
序論
ビザンチン医学
ビザンチン医学文献
ギリシャ医学の東洋への翻訳
文献の歴史的展望
アラビア医学
第2巻前半
初期中世における医学
11世紀と12世紀における医学
ヨーロッパへのアラビアの影響
13世紀における医学
後期中世における医学
文献の歴史的展望
整理者注:
原翻訳では訳者注でも中括弧()が用いられていたが、原書にも多くの中括弧が用いられているため、区別のため、訳者注および整理者注には亀甲括弧〔〕を用いることにした。なお、特に注とする場合を除いて「訳者注、整理者注」の語は用いていない。