Chapter 1 of 356
一月一日(土曜)
有楽座初日。
十時に起きる。雨の正月だ。入浴し、羽織袴でお屠蘇をのみ、雑煮を少々。親子夫婦揃っての正月は今年が始めて。一時半、母上・道子とも/″\雑司ヶ谷へ墓参。雑司ヶ谷祖母上のとこへお年始に行く。四時に東宝グリルへ。古川緑波一座の年始挨拶の会。一同揃ふと、君ヶ代を合唱し、僕が一言、「昨年中は諸君勉強が足りないと思ふ、今年はもっと/\勉強して貰ひたい。僕も倍も仕事する気でゐる。今年は勉強しないものは、残して行くことも宣言して置く。」と述べた。大日本帝国万才を三唱、出征中の岩井達夫、大島時夫のために万才を三唱し、愛国行進曲を、徳山の主唱で合唱して散会。楽屋へ入る。入りは、大満員で、補助も出切り。序幕の間に、セリフを入れる。新年早々の不勉強で、まるでセリフが入ってゐないのだ。「大久保彦左衛門」の一景、ポン/\と膝をたゝきながら、講釈をやるところで、まるでセリフが出ず、「初日イのことなればアさうすら/\とは行かぬと思し召せ。」とやったのは我ながら大した度胸。「大久保」は僕の役が書けてないからつまらないが、思ったよりよかった。「初春コンサート」の「江戸っ子部隊」の歌は、大丈夫受けるらしい。「海軍のロッパ」は、時間がのびて十一時すぎたら、其筋の命により、とあって中断のやむなきに至り、フィナーレをやって打ち出し。おわびまでに、丁度来てゐた徳山を引ぱりだして、「愛国行進曲」を歌はせた。かくて十一時半ハネ。文芸部のみ残って、カット相談。