Chapter 1 of 1

Chapter 1

「われ/\は諷射しよう!」と詩人大江鉄麿は、幅広いこめかみを引きつけて吃りながら言った「保留と伏字の泥沼で、編輯者が自分で自分の評判を悪くしたとき犬の詩を書く代りに書かすことが、ジャーナリズムの紹介業者たちの仕事となっているときわれ/\がみんな真面目な吃りであることを強いられているときわれ/\は正確に、そして効果的に吃ろう!

刺すことは、敵の一卒を倒すだろうだが散兵壕はいま大量屠殺のまっさいちゅうだわれ/\が射程を拡大しなければ、何によってわれ/\の立遅れを克服することが出来るだろう射ることは敵の全線を乱すだろうたとえ一卒を倒さずとも、全隊を乱せばわれ/\の任務は終るのではないか詩は単独ではかつて何者をも倒しえなかった―――また永久に倒しえぬだろう。」

詩人大江鉄麿は、労働で上皮だけ油ぎった額を句切りごとに昂奮に吃らせ、ヴェードヌイのようにおどけてみせながら言った「諷刺の代りに、われ/\は諷射しようではないか!」

(十四行詩)―一九三五・八・三一―

●図書カード

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