Chapter 1 of 1

Chapter 1

純潔にして生氣あり、はた美はしき「けふ」の日よ、

勢猛き鼓翼の一搏に碎き裂くべきか、

かの無慈悲なる湖水の厚氷、

飛び去りえざりける羽影の透きて見ゆるその厚氷を。

この時、白鳥は過ぎし日をおもひめぐらしぬ。

さしも榮多かりしわが世のなれる果の身は、

今こゝを脱れむ術も無し、まことの命ある天上のことわざを

歌はざりし咎か、實なき冬の日にも愁は照りしかど。

かつて、みそらの榮を忘じたる科によりて、

永く負されたる白妙の苦悶より白鳥の

頸は脱れつべし、地、その翼を放たじ。

徒にその清き光をこゝに託したる影ばかりの身よ、

已むなくて、白眼に世を見下げたる冷き夢の中に住して、

益も無き流竄の日に白鳥はたゞ侮蔑の衣を纏ふ。

●図書カード

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