Chapter 1 of 8

序言

妖怪学は応用心理学の一部分として講述するものにして、これに「学」の字を付するも、決して一科完成せる学を義とするにあらず。ただ、妖怪の事実を収集して、これに心理学上の説明を与えんことを試むるに過ぎず。すなわち、心理学の学説を実際に応用して事実を説明し、もって心理考究の一助となすのみ。かくのごとく、妖怪の事実を考究説明して他日に至れば、あるいは一科独立の学となるも知るべからず。ゆえに、これを講述するは、哲学ならびに心理学研究に志ある者に、裨益するところあるは明らかなり。これ、余が妖怪学の講義を始むるゆえんなり。

しかりしこうして、余、いまだ妖怪の事実を究め尽くしたるにあらず、今日なお事実捜索中なれば、各事実について、いちいち説明を与うることあたわず。ただ、余が従来研究中、二、三の事実につき説明を与えしもの、あるいは雑誌、あるいは新聞、あるいは諸小冊子中に参見せるあり。今これを集録し、その部類を分かち、さらにその後研究したる事実を増補し、左に「妖怪学講義」として掲載することとなれり。読者、よろしく心理学講義の一部分とみなすべし。

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