Chapter 1 of 1

Chapter 1

「おじさん、こんど、あめ屋さんになったの。」

正ちゃんは、顔なじみの紙芝居のおじさんが、きょうは、あめのはいった箱をかついできたので、目をまるくしました。

「ほんとうだわ、おじさん、あめ屋さんになったの。」と、花子さんもききました。

「ええ、あめ屋になりましたよ。」

「どうして?」

「紙芝居がたくさんになって、話では、はやりませんから、これからあめで、なんでも造りますから買ってくださいね。」と、おじさんは、いいました。

そこへ、英ちゃん、誠さん、年ちゃんたちが集まってきました。

「おじさん、さるでも、たぬきでも、なんでも造れて。」

英ちゃんは、不思議そうに、おじさんの顔を見ました。

「いつ、おじさんは、けいこをしたんだい。」と、誠さんが、ききました。

「おじさんは、もとから、このほうがお話よりもうまいんです。」と、おじさんが、笑いました。

正ちゃんは、お家へ駆け出してゆきました。年ちゃんも、つづいてゆきました。お母さんに、おあしをもらってくるためです。そのうち正ちゃんは、にこにこしながら、もどってきました。

「なにをこしらえてもらうかな。」と、正ちゃんが頭をかしげました。

「正ちゃん、うさぎがいいだろう。」と、誠さんがいいました。

「うきぎなんか、つまらない。それよりか、象がいいな。」

「ああ、象がいいわ。」と、花子さんが、いいました。

正ちゃんは、動物園で見た象のことを思い出して、それがいいと思ったから、

「おじさん、象をこしらえておくれよ。」と、おあしを渡しました。

「はい、はい、象をこしらえますかな。」と、いって、おじさんは、あめを管の先につけて、まるめたり、吹いたりして、やっと一ぴきの象ができ上がりました。

すると、これを見た、子供たちは、笑い出しました。

「おじさん、これが象なの?」

「象と見えませんか。」

「鼻が足みたいだ。」

「尾が、あんまり大きくて、みっともないよ。」

みんなは、げらげら笑い出しました。おじさんは、きまりが悪くなって、

「象は、下手ですから、なにか、ほかのものを造ってあげましょう。」といいました。けれど、子供たちは、もう、信じませんでした。

「おじさんは、やはり、お話がいいよ。」と、年ちゃんがいいました。

「ああ、お話がいいね。」と、みんなが、賛成しました。

夏の白い雲がうごく、空の下の原っぱで、子供たちは、おじさんを取り巻いて、かわいそうな子供のお話をききました。絵紙はなかったけれど、話が上手で、目に見る気がしてみんなは感心してきいていました。お話が終わると、おじさんは、あめを分けてくれました。

「おじさん、たぬきや、象をつくるより、よっぽどお話のほうがおもしろいよ。」

「もう、そんなもの、つくるのおよしよ。」

「じゃ、また明日から、紙芝居の道具を持ってきますかな。」

「僕たち、ほかの人のをきかないから。」

「ありがとうございます。」と、人のよいおじさんは、喜んで、箱をかついで、お家へ帰りました。

どんなに、おじさんは、やさしいみんなの心を、ありがたく思ったでしょう。

●図書カード

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