Chapter 6 of 6
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柳田先生は、おなじ五説経の「山椒太夫」を算所と言ふ特殊部落の芸人の語り出したもの、としてゐられる。
かう言ふ事の行はれるのは、書き物の台本によらず、口の上に久しく謡ひ伝へられて来た事を示してゐるのである。
はじめて語り出し、其を謡ふ事を常習としてゐた人々の仲間の名称は、其語り物の仮りの表題から更に、作中に入りこんで人物の名となり易いのである。
「帰らうやれ、元の古巣へ」と言ふのは、葛の葉物には、つき物の小唄の文句である。こんなところにも「妣が国」の俤は残つて居た。
信太妻と言ふ表題も、実は、いつからはじまつたものとも知れぬ。本文には見えぬ語なのである。此にも由来はありさうである。其上、此名が、異族の村から来た妻、と言ふ意を含んで居る様なのもおもしろいと思ふ。