Chapter 4 of 5
行事の意味
此祭りを、雪祭りと通称して居ますのは、譬ひ一握りの雪でも神前に供へなければ、此日の祭儀は行はれないと信じられて来て居たからです。それで若し、近辺に雪のない時には、二里余も西北に隔つた平谷峠あたりまでも出かけて雪をとつて来る相です。此は、言ふまでもなく、雪を以つて田の作の象徴と見るので、祭りの夜に当つて雪が降らなければ、当年の成り物は望みがないと考へたところから出た、変化であります。
此祭りを始める前に、第一に、社の上にあるがらん様と言ふ祠を祀ります。此は、所謂伽藍神で、前に申した、社・寺の地主なる、精霊の発動を意味する行事であります。此から、神事やら芸能が引き続いて行はれるので、翌朝午前まで続きます。只今では、大体午前の十時か十一時に終りますが、昔は、明け方、日の出を限りとしたらしいのです。
此行事の最後に行はれるのは、田遊びと称へるもので、宣命と称するものを、社地の一部で唱へて居る間に、芸能がすべて結着する様になつて居るのです。朝に残る芸が少々はありますが、大体は、日の出前に三匹の鬼が出て、神主に退散させられる儀式を境として居ります。鬼が退散するに当つて、其口へ朝日が差し込む様に事を運ばなければ、其年は不作だと言うた相ですが、今では、さうは出来なくなつて居ります。