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少女時代
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少女時代
片岡義男
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번역 Pagera AI
원문 Public Domain
Chapter 10 of 14

6

ホミの自宅から小学校まで、歩いて七、八分だった。彼女が三年生、四年生、そして五年生だった頃を中心に、通学途中でよその家の前に立ちどまり、じっとその家を見ることを、彼女は頻繁におこなっていた。通学路は住宅地のなかだ。歩いていく道の両側には、なんの変わりばえもしない民家が、平凡に連続していた。特定の一軒ではなく、ふと気になった一軒の前に立ちどまり、飽きることなくいつまでも、彼女はその家を眺めて過ごした。

そのようなときのホミを、母親は、一度だけ目撃したことがあった。立ちどまったホミがじっと一軒の家を見ている道を、偶然に母親がとおりかかったからだ。その家を、母親は、ホミの友だちの家だと思った。友だちが家から出てくるのを娘は待っているのだと、母親は思った。

娘のかたわらに立ちどまってしばらく待った母親は、

「来ないわね。どうしたのかしら」

と言った。

「どうもしてないよ」

ホミが答えた。

「呼んでらっしゃいよ」

「誰を?」

「友だち」

「誰の友だち?」

「友だちを待ってるのじゃないの?」

その民家を示して、母親はホミにきいた。ホミは首を振った。

「いいえ」

「まあ」

「見てたの」

「なにを?」

「このお家を」

「なぜ?」

「この家にも私のような女のこが住んでるのかなあと思って」

「住んでるのかしら」

「知らない」

「お家を見てたの?」

「見て想像してたの。私とおなじような女のこが住んでるのを想像してたら、その女のこと私がどんどんひとつに重なって、私はこの家の子供になってしまった」

まだ小学生の娘を、母親は不思議そうに見つめた。そして、

「お家へ帰りましょう」

と言った。

「どこのお家?」

ホミはききかえした。

「ホミのお家」

「私はここ」

立ちどまって見ていたその民家を、ホミは示した。

「ここはよそのお家でしょう」

「女のこがいるの」

「いませんよ」

「いる」

「わからないわ、そんなこと」

「私とおんなじ女のこ」

「ホミ。帰りましょう。ママもちょうどお家へ帰るとこだったの。よかったわ、会えて。予定より遅くなったから、急いでたのよ。学校は早く終わったの?」

母親の質問にホミは小さく一度うなずいた。

「帰りましょう」

母親は娘に片手をさしのべた。ホミはその手を取った。母親は歩き始め、ホミもともに歩いた。歩き始めてすぐに、ホミはその家をふりかえった。

「私がふたつに分かれた」

と、ホミは母親に言った。

「ひとりはあの家にいて、もうひとりはここにいます」

「ホミは全部ここよ」

ホミの小さな手を握っている自分の手に、母親は力をこめなおした。しばらくそのまま歩いてから、

「痛いよ、ママ」

と、ホミは言った。手にこめた力を、母親は少しだけゆるめた。

Chapter 10 of 14
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