Chapter 1 of 58
智慧の相者は我を見て
智慧の相者は我を見て今日し語らく、
汝が眉目ぞこは兆惡しく日曇る、
心弱くも人を戀ふおもひの空の
雲、疾風、襲はぬさきに遁れよと。
噫遁れよと、嫋やげる君がほとりを、
緑牧、草野の原のうねりより
なほ柔かき黒髮の綰の波を、――
こを如何に君は聞き判きたまふらむ。
眼をし閉れば打續く沙のはてを
黄昏に頸垂れてゆくもののかげ、
飢ゑてさまよふ獸かととがめたまはめ、
その影ぞ君を遁れてゆける身の
乾ける旅に一色の物憂き姿、――
よしさらば、香の渦輪、彩の嵐に。