Chapter 7 of 58
寂靜
熟えて落ちたる果かと、噫見よ、空に
日は搖ぎ、濃くも腐れし光明は
喘ぎ黄ばみて灣の中に滴り、
波に溶け、波は咽びぬたゆたげに。
磯回のすゑの圓石はかくれてぞ吸ふ、
飽き足らひ耀き倦める夕潮を、
石の額は物うげの瑪瑙のおもひ、
かくてこそ暫時を深く照らしぬれ。
風にもあらず、浪の音、それにもあらで、
天地は一つ吐息のかげに滿ち、
沙の限り彩もなく暮れてゆくなり。
たづきなさ――わが魂は埋れぬ、
こゝに朽ちゆく夜の海の香をかぎて、
寂靜の黒き眞珠の夢を護らむ。
熟えて落ちたる果かと、噫見よ、空に
日は搖ぎ、濃くも腐れし光明は
喘ぎ黄ばみて灣の中に滴り、
波に溶け、波は咽びぬたゆたげに。
磯回のすゑの圓石はかくれてぞ吸ふ、
飽き足らひ耀き倦める夕潮を、
石の額は物うげの瑪瑙のおもひ、
かくてこそ暫時を深く照らしぬれ。
風にもあらず、浪の音、それにもあらで、
天地は一つ吐息のかげに滿ち、
沙の限り彩もなく暮れてゆくなり。
たづきなさ――わが魂は埋れぬ、
こゝに朽ちゆく夜の海の香をかぎて、
寂靜の黒き眞珠の夢を護らむ。