Chapter 4 of 29
明代嘉靖年製赤絵小鉢
明の嘉靖は日本の足利時代で、万暦の前代に当る。万暦赤絵はこれから生まれてきたところのものだ。
しかし、嘉靖年製赤絵はすべてがこれだと思ってはいけない。こんなのは千百中稀に見る美品である。万暦赤絵と言うもの、落ち着くところに落ち着いた感じを不遠慮に鼻に掛けているところがあって、聊かなんだいと言いたくなる。
嘉靖はしおらしくも未だそれに至っていない。なにごとも、ものは決ってしまうと、ゆとりと言うものがなくなって面白味を限定する。
嘉靖年製小鉢はこの意味に於て(くどい絵付けにも係わらず)、存外肩の凝らない美しさを表現していると言い得られる。(昭和九年)