一
杖 五〇円
笠 三三〇円
べんたう行李 五五円
荷物行李(おひずる) 三〇〇円
首掛袋 八〇円
鈴 二五〇円
数珠 二五〇円
札箱 五〇円
お札 二〇円
納経帖 一〇〇円
脚絆 一五〇円
白衣 四五〇円
以上のへんろ装束、並びに、持道具一切を、われ/\、四国第一番の札所は、阿波、霊山寺門前の浅野仏具店で調へることができた。
その前日の午後、神戸から乗つた“あきつ丸”を小松島で下りた途端、その汽船発着所の待合室にたま/\みいだした広告……それによつて、われ/\、その浅野仏具店といふ、おもひもよらぬ器用なものゝあるのを知つた。……といふことは、そこへ行きさへすれば、へんろ装束一切が、右からひだり、簡単に、すぐにでも間に合ふであらうといふことが、われ/\に、おのづから了解できたのである。
すなはち、
――大丈夫だよ、君。……何も心配するがものはなかつた……
と、ぼくは、同行、池田吉之助君をかへりみた。
――さうなんですなァ。……安心しました、これで……
と、東京出発以来、いかにして調達すべきかと、それをばかり苦にしつゞけた池田君は、太だ、正直に、惜みなく、口もとをほころばした。
が、そのあと、その広告のちかくに掲げられた告知……小松島保安部、小松島巡査派出所、及び、関西汽船株式会社名による乗客への注意書は、もッと、太だ、われ/\をよろこばした。
なぜか?
“――船内でのインチキ賭博には手を出さないで下さい。絶対に勝てないばかりか、刑事上の罪になります……”
といふ一トくだりの文句をその中にみつけたからである。
“――絶対に勝てないばかりか……”
なか/\、素直に、かうはいへるもんぢやァない……
――よきかな、四国……
ぼくは、ひそかに、ぼくにいつた。