Chapter 1 of 11

前置(著者の)

「あア/\斯うも警察のお手が能く行届き、何うしても逃れぬ事が出来ぬと知たら、決して悪事は働かぬ所だッたのに」とは或罪人が己れの悪事露見して判事の前に引据られし時の懺悔の言葉なりとかや、余は此言葉を聞き此記録を書綴る心を起しぬ、此記録を読むものは何人も悪事を働きては間職に合わぬことを覚り、算盤珠に掛けても正直に暮すほど利益な事は無きを知らん、殊に今日は鉄道も有り電信も有る世界にて警察の力を潜り果せるとは到底出来ざる所にして、晩かれ早かれ露見して罰せらるゝは一つなり。

斯く云わば此記録の何たるやは自ら明かならん、個は罪人を探り之を追い之と闘い之に勝ち之に敗られなどしたる探偵の実話の一なり。

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