Chapter 8 of 35
昨朝の七時頃
シリングの宿所の親方であり且フリイベルグ工場の雇傭人たるウェステンブロオクが厩の馬の手入にギャムブル横町の格子戸へ出た。彼は木戸に錠が下りてゐるのを見てシリングを呼んだ。勿論應へはなかつた。幾度か呼んでゐるうち其聲がホルレルバッハの注意を惹き窓から覗いて云つた。「ヘルマンはてつきり昨夜殺されましたぜ」ウェステンブロオクは「早く出て來て木戸へ登れ」と云つた。云はれる儘にホルレルバッハは木戸を明けて相手を中へ入れた。二人は直ちに血腥い兇行の跡を發見した。厩は血痕が四散し死物狂ひの格鬪の跡を示し、