Chapter 1 of 1
Chapter 1
津軽の海風は
暮れ行く夕日の彼方へと連絡船を冷たく吹き送る
桟橋に立ち去り兼ねて見送る人々とも別れて
身をマントに包み
頬をうずめて 物蔭甲板に佇めば
防波堤に点る明滅の灯火も見えずなり
巍然たる函館山の容姿も
次第に海をへだてて
水夫の投げこんだ速度計の速めらるるままに
闇の中に失われゆく
かくて海峡の海は次第に荒く
空よりは白き贈り物音もなく
真闇の中に降り来り、海に消え マストに積る
船は船底にひびくエンジンの音と
波を切り進む海路の跡をしばし残して
ひたすらに蜜柑の木々実る本土の
最北端の港 青森へと馳る
●図書カード